大阪・関西万博で注目された「空飛ぶ車」は、2030年頃の実用化を目指して、世界中で開発が進み、日本でも大手企業やスタートアップが参入しています。

しかし、そもそも「空飛ぶ車」とは具体的に何を指すのか、何ができるのか、何がすごいのか、よく知られていません。

この入門シリーズでは、エアモビリティ業界の理解を深めたい方に向けて、基本的なことから整理していきます。第1回は、「空飛ぶ車とは何か」です。

「空飛ぶ車」の正体は eVTOL

まず、「空飛ぶ車」という言葉は通称であり、技術的には eVTOL(イーブイトール)と呼ばれる機体を指すことがほとんどです。

道路を走っている車が、そのまま空も飛び、さらに有名なSF映画では、過去や未来に飛んでいきますが、現在実用化が進んでいるものの多くは、「車が変形して飛ぶ」乗り物ではなく、車というより「小型の電動航空機」に近いものです。

eVTOL という名前の由来

eVTOL は "electric Vertical Take-Off and Landing" の頭文字をとった略語で、日本語では「電動垂直離着陸機」と訳されます。

名前を分解すると、その特徴がそのまま見えてきます。electric(電動)、Vertical Take-Off and Landing(垂直に離陸・着陸する)。つまり「電気で飛び、ヘリコプターのように真上に飛び立ち、真下に降りられる航空機」——それがeVTOLです。

従来の乗り物にはない3つの特徴

eVTOLが注目される理由は、その3つの特徴に集約されます。

1つめは 電動であること。 バッテリーとモーターで飛ぶため、エンジンのヘリコプターに比べて圧倒的に静かで、飛行中に排出ガスを出しません。都市の上空を飛ぶ乗り物にとって、静かさと環境性能は決定的に重要です。

2つめは 垂直に離着陸できること。 飛行機のように長い滑走路を必要とせず、ヘリポート程度のスペースがあれば発着できます。これにより、ビルの屋上や駅前など、都市部の限られた場所でも運用できる可能性が開けます。

3つめは 複数のローター(プロペラ)で飛ぶこと。 多くのeVTOLは、機体のあちこちに小さなローターを複数備えています。これは安全性を高める工夫で、仮に一部のローターが止まっても、残りで飛行を続けられるように設計されています。

なぜ「空飛ぶ車」と呼ばれるのか

厳密には航空機であるにもかかわらず「空飛ぶ車」と呼ばれるのは、その使われ方が「車」に近いと期待されているからです。

特別な免許を持つパイロットだけが乗る特別な乗り物ではなく、いずれタクシーのように、あるいは自家用車のように、私たちの日常の移動手段になる——そんな未来像が「空飛ぶ車」という言葉に込められています。

実現すれば、渋滞とは無縁の「空の道」を使った移動が、生活の一部になるかもしれません。


次回(Vol.02)では、「eVTOLとドローン・ヘリコプターとは何が違うのか」を掘り下げます。