前回(Vol.03)まで、空飛ぶ車(eVTOL)が何なのか、他の乗り物とどう違うのか、なぜ今注目されているのかを見てきました。今回は、もう一歩踏み込んで「では、具体的に何ができるのか」——実際の使い道(ユースケース)を整理します。

「空を飛ぶ」と聞くと夢が広がりますが、使い道によって、実現の近さも、ビジネスとしての現実味も、かなり違います。5つに分けて見ていきましょう。

使い道1:都市のエアタクシー

もっともよく語られるのが、都市部での「空のタクシー」です。渋滞した道路の上空を飛び越えて、空港から都心へ、あるいは都市のなかを短時間で移動する、という使い方です。

Joby(米国)やArcher(米国)、SkyDrive(日本)などが主に目指している事業です。ただし、都市の上空を日常的に飛ぶには、離着陸場の整備、空域のルール作り、騒音や安全性への理解など、超えるべき壁がもっとも多い分野でもあります。

使い道2:地方・離島の「足」

ドローン配送においても事業化が進んでいますが、地方や離島での活用は有力です。

都市と違い、地方や離島は人口が少なく、空域が混み合っていません。橋やトンネルを新設するより、空飛ぶ車で結ぶほうが安く早い、というケースもありえます。病院への救急搬送、交通が不便な地域の移動手段としても期待されています。「渋滞を避ける」都市型とは逆に、「そもそもインフラが薄い」地域を補う使い方です。

使い道3:観光・遊覧

景色を空から楽しむ観光フライトも、早い段階で現実になりそうな分野です。

理由は、移動そのものより「体験」に価値があり、決まったルートを短距離飛ぶだけで成立するからです。料金が多少高くても、観光客なら受け入れられやすい。採算の面でも、通勤の足より先に回りやすい使い道です。

使い道4:物流(モノを運ぶ)

人ではなくモノを運ぶ使い方もあります。ただしここで注意したいのは、「物流ドローン」と「空飛ぶ車(eVTOL)」は、しばしば別物だということです。

小型の荷物を運ぶのは、主に無人の物流ドローンの役割です。一方、eVTOLのような大型機は、より重い貨物や、人と荷物の両方を運ぶ場面で検討されています。都市の上空を「誰が・何を運ぶために使うか」は、今後の大きな論点になりそうです。

使い道5:災害対応・救急

地上の道路が寸断される災害時に、空から物資や人を運ぶ使い方です。電動で滑走路もいらないため、被災地でも動かしやすい、という利点があります。

人命や公共性に関わるため、採算より「社会的な意義」で先に導入が進む可能性がある分野です。

おまけ:富裕層の「個人の乗り物」

ここまでは主にサービス(誰かが運んでくれる)の話でしたが、海外では「個人が所有して自分で飛ばす」機体も登場しています。ヨットや別荘を持つ富裕層に向けて売り出されており、エアタクシーとは全く別の市場です。「空飛ぶ車」とひとくくりにされがちですが、実は向かう先がまったく違う、という好例です。

どれが最初に現実になるか

主に5つの使い道を見てきましたが、大事なのは「すべてが同時に実現するわけではない」ということです。

一般に、ルールが軽く、短距離で、採算の取りやすいもの——観光や、人命に関わる災害対応、空域の空いた地方——のほうが先に動きやすいと見られています。逆に、もっとも注目される「都市のエアタクシー」は、超えるべき壁が多く、本格普及には時間がかかると考えられます。

「空飛ぶ車で何ができるか」を考えるときは、夢の大きさだけでなく、「それはいつ、どんな順番で現実になるのか」をセットで見ることが大切です。本メディアでは、その現実の進み方を、これからも追いかけていきます。


次回(Vol.05)は、「空飛ぶ車をつくっている主要プレイヤー」——世界と日本の代表的な開発企業を整理します。