SkyDrive(愛知県豊田市)らが、大阪市内のビル屋上にある「緊急離着陸場」を、空飛ぶクルマ(eVTOL)の離着陸場として使えるか調査する事業を始める。内閣府のスーパーシティ関連事業(令和8年度)に採択された取り組みで、あくまで実現可能性を検証する「調査」の段階だ。2028年のサービス開始を見据えている。

事業の代表はOsaka Metro(大阪市高速電気軌道)。施設の調整や運用条件の整理、関係者との協議といった事業全体の取りまとめを担う。SkyDriveは構成員として、航空法の観点の整理や運航要件の作成など、調査の設計面を受け持つ。このほか大阪府・大阪市、協力事業者として関西電力、長大、空港振興・環境整備支援機構が加わる。

「Hマーク」を平時に使えないか

今回の調査対象は、大阪市内に146カ所ある屋上緊急離着陸場だ。これは大阪市消防局の指導基準により、一定以上の高さのビルに設置が求められているもので、火災などの災害時にヘリコプターが救助・消火にあたるためのスペースを指す。ビル屋上の「H」マークが、それにあたる。

着目点は、この146カ所が「災害に備えて確保されているが、平時はほとんど使われていない」ことだ。この既存スペースを、平時には空飛ぶクルマの離着陸場として活用できないか——それが今回の問いである。

調査では、こうしたビル屋上がeVTOLの発着に使えるか、周辺の空域や建物による制限、風の流れ、騒音などを検証する。あわせて、使われていない空港の転用可能性や、関係機関とのルール作りも検討するという。

なぜ「既存インフラの活用」なのか

空飛ぶクルマの普及には、離着陸場(バーティポート)をどこに作るか、という大きな壁がある。とくに都心部では、新たにまとまった用地を確保するのが難しく、地価も高い。「機体はできても、降りる場所がない」という問題だ。

今回のアプローチは、この壁を「新設」ではなく「既存インフラの転用」で乗り越えようとするものだ。すでにビル屋上にある緊急離着陸場を使えれば、新たな用地取得を最小限にできる。都市にすでにある資産を、別の用途でもう一度働かせる、という発想である。

この動きをどう読むか

物流ドローンとの“空の取り合い”

今回の事業は旅客を運ぶ空飛ぶクルマが対象で、物流ドローンは含まれていない。ただ、都市の低〜中高度の空域と離着陸インフラを「誰がどう使うか」は、いずれ避けて通れない論点になる。物流ドローンもまた、都市部での配送網を広げようとしており、空域・騒音・安全管理のルールは両者で重なる部分が多い。ビル屋上という限られた拠点をめぐっても、将来的には旅客と物流で優先順位の調整が必要になるだろう。今は別々に進む二つの流れが、都市の空をどう分け合うか——ここは今後の見どころだ。(これは本件への直接の言及ではなく、業界全体を踏まえた見立てである)

大阪の都市開発の流れの中で

大阪は万博(2025年)で空飛ぶクルマのデモ飛行を実施し、その後もIR(統合型リゾート)を含む夢洲の開発が控える。「次世代モビリティを都市に実装する」という機運が、他地域より強い土地だと言える。もっとも、今回の146カ所はあくまで大阪「市内」のビル屋上が対象で、夢洲やIRの計画と直接結びつくものではない。ただ、万博を一過性のイベントで終わらせず、日常の都市インフラに落とし込もうとする今回の動きは、大阪が積み上げてきた流れの延長線上にある、とは言えるだろう。(IR・夢洲との直接の関係は、本件では示されていない)