SkyDrive(愛知県豊田市)が、自社の機体設計思想をまとめた文書を公開した。テーマは「なぜコンパクトなマルチローター型を選ぶのか」だ。なお同社は自動車メーカーのスズキと資本業務提携しており、スズキグループの工場(静岡県磐田市)で機体を製造している。
eVTOL(空飛ぶクルマ)の機体には、大きく2つの方向性がある。翼を持つタイプと、翼を持たない「マルチローター型」だ。
翼があると、飛行機のように効率よく遠くへ飛べる。一方で、翼がある分だけ機体は重く、複雑になる。
SkyDriveが問うのは、「では、ビルが密集した都市部で使うなら、どちらが安全か」だ。その答えとして、同社はマルチローター型を選んだ。理由は、次に述べる「安全性のジレンマ」にある。
「安全性のジレンマ」という論点
航空機は、万が一バッテリーの一部が故障しても、安全に着陸できる設計が必須だ。
ところが、翼を持つ重い機体は、それを支えるために大きなバッテリー出力を必要とする。ビルが密集し、緊急着陸できる場所も限られる都市部では、一部が故障したときに垂直で安全に降りきれるかどうかが、切実な問題になる。これがSkyDriveの言う「ジレンマ」だ。
一方SkyDriveは、12基のローターを配置して「ディスクローディング(ローター面積あたりの重量)」を低く抑える設計を採る。これにより、万が一バッテリーの一部が故障しても、垂直に安全着陸できる出力の余裕を確保している、と説明する。
都市の短距離に「絞り込む」という判断
SkyDriveは、都市部の短距離移動(30km未満)を前提とするなら、長距離を効率よく飛ぶための重い装備を積むメリットは限定的だ、と述べる。短距離しか飛ばないのに、長距離向けの重い機構を載せるのは、かえって不利だという考え方だ。
狙うのは、駅や空港から目的地までの「ラストワンマイル」を空で補完する役割。コンパクトなマルチローター型は、離着陸場(バーティポート)を小さくできるという都市部での利点もある。
なお同社も、50kmを超える長距離の地域間移動では、翼を持つタイプが優れることは認めている。「マルチローターがすべてに優れている」のではなく、「都市の短距離という用途では、マルチローターが合理的」という、絞り込んだ上での選択である。
