前回(Vol.01)、空飛ぶ車の正体は「eVTOL(電動垂直離着陸機)」だと説明しました。

ここで、こんな疑問が出てきます。「垂直に飛ぶならヘリコプターと同じでは?」「電動ならドローンと同じでは?」「垂直に飛ぶ乗り物といえば、オスプレイもあるよね?」

どれももっともな疑問です。今回は、eVTOLを、よく似た3つの乗り物——ドローン、ヘリコプター、オスプレイと比べて、その違いを紐解きます。

ドローンとの違い=「人を乗せるか」

ドローンも電気(バッテリーとモーター)で飛び、複数のローターを持ちます。ここはeVTOLとそっくりです。

違うのは「人を乗せるか」。ドローンは無人で、撮影・点検・配送などに使われます。eVTOLは人を乗せて運ぶことを目的にしています。

ただ、この2つは技術的に地続きです。ドローンで培われた制御・自動飛行・安全設計の技術が、そのままeVTOLの土台になっています。その意味でeVTOLは「人が乗れる、大型で高度に安全なドローン」の延長線上にあると言えます。

ヘリコプターとの違い=「電気か、燃料か」

ヘリコプターは、人を乗せて垂直に飛びます。ここはeVTOLと同じです。

違うのは動力です。ヘリコプターはエンジン(燃料)で飛び、eVTOLはバッテリーとモーター(電気)で飛びます。電動のeVTOLは、ヘリコプターより静かで、飛行中に排出ガスを出しません。都市の上を日常的に飛ぶことを考えると、この差は大きい。

ただし——ここが重要ですが、電動であることは、いいことばかりではありません。後で述べる「飛行時間の短さ」という課題は、まさに電動(バッテリー)であることの裏返しです。

オスプレイとの違い=「仕組みと、目的」

オスプレイも、垂直に離着陸して人を乗せて飛ぶ、垂直離着陸機の一種です。ここだけ見るとeVTOLと似ています。

でも、中身はかなり違います。

オスプレイは「ティルトローター」という方式です。主翼の両端にある大きな回転翼(エンジン)の角度を、垂直から水平へ変えることで、ヘリコプターのように垂直に飛び立ち、飛行機のように高速で長距離を飛びます。動力はエンジン(燃料)で、航続距離は約3,700kmと桁違いに長い。ただし機体は大きく、音も大きく、軍用の輸送機です。

つまりオスプレイは「大型・長距離・軍用」。対してeVTOLは「小型・短距離・都市の日常向け」。垂直に飛ぶという一点は共通でも、目指す方向が正反対と言っていいほど違います。

最大の課題=バッテリーによる「飛行時間・距離」の制約

ここまでeVTOLの特徴を見てきましたが、大きな課題もあります。それは飛行時間・航続距離の短さです。

電気(バッテリー)で飛ぶeVTOLは、燃料で飛ぶヘリコプターやオスプレイに比べて、短い距離しか飛べません。

具体的な数字で見てみましょう。現在、実用化の最前線にいるJoby(トヨタ出資)やArcherの機体で、1回の充電で飛べる距離は最大でも約240km。多くの都市型eVTOLは90〜240km程度です。ヘリコプターやオスプレイの航続距離とは比べものになりません。

理由は、バッテリーが重いからです。現在のeVTOLでは、バッテリーが機体重量の25〜35%を占めます。距離を伸ばそうとバッテリーを増やすと、その分だけ重くなり、乗せられる人数が減る。この「距離か、乗客か」のトレードオフが、今のeVTOL最大の壁です。

だからこそ現在のeVTOLは、無理に長距離を狙わず、空港と都心の間や、都市間の短い移動といった用途に絞っています。

将来はどうなるのか

この課題は、解決に向かってはいます。業界では、2028年にかけてバッテリーの航続距離を30〜50%伸ばし、2029〜2032年ごろには全固体電池などの新技術で800kmを目指す、という動きがあります。

ただし、これはあくまで目標であり、実現時期も達成度も、まだ確約されたものではありません。「電気で静かに飛べる」という利点と、「バッテリーゆえに遠くまで飛べない」という課題。この両方を抱えているのが、2026年時点のeVTOLの、正直な姿です。


次回(Vol.03)は、「なぜ今、空飛ぶ車がこれほど注目されているのか」を掘り下げます。技術的な課題が残るなかでも、なぜ"今"これほど期待が集まっているのか。その背景を見ていきます。